REPORTS

第36回 B’AI Book Club 報告
Anita Say Chan (2025) Predatory Data: Eugenics in Big Tech and Our Fight for an Independent Future

プリヤ・ム(B’AI Global Forum リサーチアシスタント)

・日時:2025年3月25日(火)13:00-14:30
・場所:ハイブリッド(B ’AIオフィス&Zoomミーティング)
・言語:英語
・評者:久野愛(東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授)
・書籍:Anita Say Chan. (2025). Predatory Data: Eugenics in Big Tech and Our Fight for an Independent Future. University of California Press.

2025年3月25日、B’AI Global Forumのプロジェクトメンバーとその関係者が参加する書評会「B’AI Book Club」の第36回が開催された。本書評会では、久野愛准教授がAnita Say Chan著 『Predatory Data: Eugenics in Big Tech and Our Fight for an Independent Future』を読み解き、データ資本主義や監視社会における優生学の遺産を、予測分析やAI管理、テック業界のメリトクラシー的文化との関係から考察した。

本書の各章は、データ駆動型優生学の歴史的な取り上げから、現代のスマートシティや企業監視の実態までを説明しており、久野准教授はAnita Chanが提唱する「データプルーラリズム」の概念を精神に解説した。これはフェミニズム、移民社会、コミュニティー主導の代替的データフレームを建設し、収奪的なデータ体制に抗するものである。

この書評会は、データ倫理とインフラ構造をデコロニアルで正義中心のアプローチで再考する必要性を強調するものであった。また、久野准教授は本書の理論的・政治的貢献を強調し、その特色は科学技術社会論(STS)やメディア研究、デコロニアル理論などと接続することも明らかにした。本書は、優生学を持続的なデータ構造として再検討し、それに対する抵抗を協調による改革ではなく、知の構造自体を再想像する動きとして伝えている。