REPORTS

2025年度第3回BAIRAL研究会
「『倫理設計』におけるAIの起源を再考する」報告

アマエル・コニャック(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)

・日時:2025年9月2日(火)午後5時~6時30分(日本時間)/午前9時~10時30分(ナイジェリア時間)
・会場:Zoomによるオンライン開催(事前登録不要)
・言語:英語
・ゲストスピーカー:ナイジェリア国立オープン大学哲学科 准教授・学科長 H. Titilola OLOJEDE氏
・モデレーター:アマエル・コニャック(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
(イベントの詳細はこちら

2025年9月2日(火)午後5時~6時30分(日本時間)/午前9時~10時30分(ナイジェリア時間)に、BAIRALは「『倫理設計』におけるAIの起源を再考する」をテーマにした研究講演会を開催しました。この講演会はオンラインで行われ、ナイジェリア国立オープン大学の哲学科長兼准教授であるH. Titilola OLOJEDE氏がゲストスピーカーとして登壇しました。

OLOJEDE氏はまず、2022年のChatGPT立ち上げ以来の急速な生成AIの台頭を概説し、その影響が教育や医療から産業や農業に至るまで、生活のあらゆる分野に浸透していることを指摘しました。OLOJEDE氏は、ほとんどの枠組みが西洋の視点、特に1956年のダートマス会議におけるAIの正統な「起源」にしっかりと根ざしていることを指摘しました。しかし、AIの先駆けとなり得る代替的な系譜や知的伝統は存在するのか、そしてそれらは今日のAIの倫理的設計にどのような影響を与える可能性があるのか​​、とOLOJEDE氏は問いかけました。

これに対し、OLOJEDE氏はアフリカとアジアの思想と技術の歴史に着目しました。両地域には二元論、自動化装置、そして機械工学の革新という長い伝統があり、AIは西洋の発明であるという単一の物語に疑問を投げかけていると指摘しました。そして、AIの認識論的基盤を広げるためには、これらの見過ごされてきた貢献を認識することの重要性を強調しました。

彼女の講演の中心は、「倫理設計」の6つの柱を明確にすることでした。彼女は、人間の尊厳を基盤とし、アフリカの倫理思想とウブントゥ哲学、人間中心主義、透明性と説明責任、プライバシーとデータガバナンス、公平性、そして自然法と結びつけました。これらの価値観は、AIシステムにおける偏見、ステレオタイプ、排除といった根深い問題、特に歴史的に周縁化された集団や地域における問題に対処するための豊かな基盤を提供すると彼女は主張しました。

OLOJEDE氏は結論として、AI倫理の真に適切な枠組みは、現在の技術的・規制的課題に取り組むだけでなく、AIの歴史的・文化的ルーツを再検証する必要があると提言しました。アフリカとアジアの視点をグローバルな議論に統合することで、人間の知識と経験の多様性を反映した「設計による倫理」に近づくことができると彼女は主張しました。

さらに詳しく知りたい方は、OLOJEDE氏の執筆した論文をご参照ください。

Olojede, Helen Titilola, and Ayo Fadahunsi. 2024. “On Decolonising Artificial Intelligence.” Àgídìgbo: ABUAD Journal of the Humanities 12 (1): 269–82. E-ISSN 3043-4475. Available: https://journals.abuad.edu.ng/index.php/agidigbo/article/view/924/523 

Olojede, Helen Titilola, and Felix Kayode Olakulehin. 2024. “Africa Dreams of Artificial Intelligence: A Critical Analysis of Its Limits in Open and Distance Learning.” Journal of Ethics in Higher Education. Available: https://shorturl.at/6ALCU

Olojede, Helen Titilola. 2025. “Reflecting on Diversity and Gender Equality in Artificial Intelligence in Africa.” The Thinker 101 (4): Quarter 4–2024. Available: https://journals.uj.ac.za/index.php/The_Thinker/article/view/3950