2026.Feb.10
REPORTS2025年度第4回BAIRAL研究会
「フレーム分析におけるAIの役割:共同研究者か支援者か」報告
プリヤ・ム(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
・日時:2025年12月4日(木)15:00-16:30
・場所:東京大学 浅野キャンパス 理学部3号館 327号室およびZoomミーティング(事前申し込み不要)
・使用言語:英語
・ゲストスピーカー:Dr. 劉慧雯 (Hui-Wen Liu) 台湾・国立政治大学伝播学院教授
・モデレーター:プリヤ・ム(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
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2025年12月4日、2025年度第4回BAIRAL研究会を開催した。今回は、台湾・国立政治大学(NCCU)教授のHui-Wen Liu氏を迎え「フレーム分析におけるAIの役割:共同研究者か支援者か」をテーマに講演が行われた。
Liu教授は、ソーシャルメディア上の言説を対象としたフレーミング分析において、生成系AIが社会科学研究のワークフローにどのように関与し得るのか、あるいは関与し得ないのかに焦点を当てた。 人手による「グラウンド・トゥルース」作成を通じて大規模データを機械学習用にラベリングしてきた従来の取り組みから出発し、理論やコードブックをAIに「教え込む」ことで、複雑で感情的なオンライン言説の分類をどこまで託せるのかという試みが紹介された。 そこから、ニュース報道を前提に構築された分析枠組みをソーシャルメディアのテキストに適用したときに何が起きるのか、「感情」のようなカテゴリーがどのように立ち現れるのか、そしてAIは道具・アシスタント・潜在的な共同研究者というスペクトラムのどこに位置づけられるのか、といったより広い問いが提示された。
講演全体を通して、Liu教授は技術的な詳細よりも、方法論的・認識論的な論点を強調した。 具体的には、ソーシャルメディア研究における分析単位の設定の重要性、絵文字や「+1」といった文脈依存的な表現をどのように解釈するかという問題、そしてAIが理論やコードブックをどの程度「理解」していると言えるのかを評価する難しさが論じられた。 講演で示された事例では、AIはフレーム分類のスケール拡大や枠組みとデータの齟齬の可視化には有用である一方で、人間の研究者なら行うはずの枠組みそのものの再検討といった反省的な作業は自律的には行えず、この点が研究デザインや解釈におけるAIの位置づけを再考させる契機となった。
質疑応答では、概念的な側面と実践的な側面の双方について意見が交わされた。参加者からは、AIに読ませた理論テキストの理解度をどのように確認したのか、また、そのことが信頼性や再現可能性の問題とどのように関わるのかについて質問が寄せられた。あわせて、どのようなツールを使うべきか、AIを量的研究・質的研究に活用する際のバランスについてどう考えるべきか、今後の研究者にどのようなスキルセットが求められるのかといった論点も提起され、AIを介した研究環境における学術労働・責任・協働のあり方をめぐる活発な議論へと発展した。