「Dialogue for Desirable AI プロジェクト」が人工知能学会のAI ELSI賞(Perspective(展望)部門)を受賞

2025年5月29日、B’AI Global Forumの「Dialogue for Desirable AIプロジェクト」が人工知能学会のAI ELSI賞(Perspective(展望)部門)を受賞しました。

AI ELSI賞(Perspective(展望)部門)

AI ELSI賞は、AI倫理やAIと社会との関係に関わる多様な活動を対象とし、人工知能学会倫理委員会によって運営されています。第3回目となる今回のELSI賞は、Perspective(展望)部門とPractice(実践)部門、特別部門に分かれます。

中でも、今回受賞したPerspective(展望)部門は、今後のAI研究の方向性に対して優れた倫理的視点を与える活動を表彰するもので、研究論文のほかに、ワークショップ・会議、メディア作品など幅広い形態の活動を対象としています。審査は、人工知能学会倫理委員会と学会内外の有識者による審査委員会により実施されました。

受賞活動について

受賞活動名「Dialogue for Desirable AIプロジェクト」

本プロジェクトは、「望ましいAI(Desirable AI)」の形を検討することを目的に、東京大学B’AIグローバル・フォーラム、ボン大学Center for Science and Thought、ケンブリッジ大学Center for the Future of Intelligence、ヨーロッパ応用科学大学が共同で実施した対話型プロジェクトです。2024年10月から2025年1月にかけて、「Cross-Cultural Approaches to Desirable AI」をテーマに全10回のオンラインセミナーシリーズを開催し、学術界と市民社会の幅広い層が参加しました。

本プロジェクトは、以下の取り組みを実現させてきました。

1学術界と市民社会の対話
 技術的議論に留まらず、「Indigenous AI」や「Feminist AI」などの理論枠組みに基づき、AIの倫理的課題や社会的影響について多様な背景を持つ市民を巻き込んだ議論を展開。AI開発・利用の文化的バイアスや社会的構造を問う実践的な試みにより、市民参加型の倫理的熟議を促進しました。

2グローバルな協力体制と発信力
 日本、ドイツ、イギリスの研究機関による連携に加え、アフリカ諸国の研究者も参加するなど、グローバルな視点から地域に根差した技術観の共有を実現。動画アーカイブ公開や学術誌での特集号刊行計画など、継続的な発信にも取り組んでいます。

3AIナラティヴの再構築
 ディストピア/ユートピアといった二元論を超え、現実的かつ包摂的な未来像を提示。障害や格差、サステナビリティ、デジタル死後産業(DAI)、創作活動や著作物をめぐる法規制といった社会課題を視野に入れながら、AI技術の限界と可能性を多角的に探るフラットフォームを構築しました。

こうした取り組みに対し、今後の国際的な展開が期待され、今回の受賞に至りました。

本プロジェクトは、今後も持続的に活動を展開する予定であり、2025年11月より第2回セミナーシリーズを開催予定です。さらに、セミナー内容の学術的成果をまとめた特集号の出版も計画されています。

参考ページ:

https://baiforum.jp/events/en076/
https://www.desirableai.com/events/cross-cultural-approaches