2025.Feb.19
REPORTS第33回 B’AI Book Club 報告(※研究発表)
ディスカッション “Selfhood in the era of AI”
プリヤ・ム(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
・日時:2024年11月26日(火)13:00-14:30(JST)
・場所:ハイブリッド(B'AI オフィス&Zoomミーティング)
・使用言語:英語
・評者:呉先珍(B’AI Global Forum 特任助教)、プリヤ・ム(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
2024年11月26日、第33回B’AI BookClubが開催されました。この読書会は、B’AIグローバルフォーラムのプロジェクトメンバーが主催する書籍レビューセッションです。今回は、特任助教の呉とプリヤが「Selfhood in the era of AI」というテーマで発表を行い、その後、参加メンバーとのディスカッションが行われました。このセッションは、セミナーシリーズ 「Cross-Cultural Approaches to Desirable AI」の一環として行われた呉、プリヤ、そして何欣琪(立教大学助教、東京大学大学院情報学環客員研究員)による同テーマの講演を振り返る議論でもありました。
呉のプレゼンテーション「Rootless Signifiers: Does Signification Have a Chance in the Digital World?」では、GPTのような大規模言語モデル(LLM)が自己認識、言語、関係性の認識にどのような影響を与えたかを探求しました。特に、「地に足の着いた」人間同士のつながりがアルゴリズムに媒介された関係に移行している点に焦点を当て、デジタルな関係性の中でのアルゴリズム的親密性の台頭や、その中での擬似的な相互関係と感情的深みの欠如といった目に見える影響が強調されました。また、ソシュール、メルロ=ポンティ、レヴィナスの理論を引用し、LLMが倫理的かつ意味のある関係性の中で言語を「地に足の着いた」(grounded)形で定着させることができない点を批判しました。「地に足の着いた」関係性は、意味が他者への倫理的責任や特異性から生まれる対面でのやり取りに重点を置いています。このプレゼンテーションでは、真の友情や関係性を築くためには、アルゴリズム的模倣を超え、関係性と倫理に基づく基盤が必要であると主張しました。
プリヤのプレゼンテーション「Embodied Self and the Creative Process」では、AI、自己、創造性の交差点を探求し、AIが人間の交流や創造的実践をどのように再構築しているかを強調しました。自己が身体性を持ちながらも技術の影響を受ける存在として論じられ、建築やファッションなどの分野でAIによって生成されたデザインが与える影響が取り上げられました。建築家がMidjourneyのようなAIツールを使用してコンセプチュアル・デザインを生成する現状についても触れ、創造の可能性を広げる一方で、AI主導の成果の信憑性や深みに関する懸念が指摘されました。また、ザハ・ハディッドのようなデザイナーの遺産が、創造的な諸過程におけるAIの役割に発する著作権や商業化などの課題に焦点を当てて検討されました。さらに、イノベーションと人間の芸術性を維持することのバランスについて問いかけつつ、これらのツールがいかにして直感的プロセスからデータ駆動型アプローチへの転換を促進したかを強調しました。AIがいかにしてさまざまな分野で倫理原則や基本的諸価値にとっての課題を投げかけるかについて取り上げ、学際的な対話の重要性も訴えられました。