2025.Mar.17
REPORTSB’AI グローバル・フォーラム5周年記念シンポジウム「AIとDE&I—デジタル人道主義の未来」報告
呉先珍(B’AI Global Forum 特任助教)
・日時: 2024年11月18日(月)13:00-17:30(日本時間)
・形式:対面およびZoomによるハイブリッド開催
・対面会場:東京大学本郷キャンパス福武ラーニングシアター
・言語:英語(同時通訳あり)
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2024年11月18日(月)、シンポジウム「AIとDE&I—デジタル人道主義の未来」が情報学環・福武ホールラーニングシアターにて開催されました。本シンポジウムは、2020年設立以後、AIと社会正義をテーマに多角的な活動を繰り広げてきたB’AIグローバル・フォーラムの5年間を振り返り、今後の活動の具体的なビジョンを描くために企画されました。
東京大学理事・副学長の津田敦教授は開会挨拶で、これまで東京大学とソフトバンクが連携して行ってきた産学協創プロジェクトの成果を紹介し、今後のさらなる協力に期待を寄せました。
シンポジウムの第一部では、久野愛准教授(情報学環)がモデレーターを務め、B’AIグローバル・フォーラムのディレクターを務める板津木綿子教授(情報学環)による5年間の活動紹介と2つの基調講演が行われました。基調講演では、AIと倫理・社会正義に関する分野で国際的に活躍されているアニタ・グルムルティ氏(IT for Change, Director)とステフ・ライト氏(Scottish AI Alliance, Head)より、データ産業における労働力の搾取など様々な社会的な不正義が後景に退く一方で、規模の大きいデータが真正性や客観性、正確性を保証するとみなされるデータイズムが前景化することへの力強い問題提起がなされました。
第二部、パネル討論では、科学技術を人類学の観点で研究するオオツキ・グラント・ジュン准教授(総合文化研究科)がモデレーターを務め、グルムルティ氏・ライト氏のほか、ソフトバンク株式会社のAI戦略を牽引する小齊平康子氏(同社AI戦略室担当部長)とAIの国際安全保障を専門とするヘン・イ・クァン教授(公共政策大学院)がパネリストとして登壇されました。
パネル討論は白熱し、約2時間にわたって活発な議論が交わされました。産業界や国際政治、国際法の視点に加え、劣悪な開発環境や限られた教育資源といった課題への洞察が交錯し、産学官民の連携、DE&Iの文脈依存性、さらには環境問題との関係に至るまで、多角的な議論が展開されました。
各パネリストは具体的で豊富な事例を交えながら鋭い批判を提起しました。特に、AI導入の必要がない状況にもかかわらず過剰な技術依存が見られる医療分野の事例、AIチャットボットの利用が環境に及ぼす影響に対するリテラシーが不足している若年層の問題、ユニコーン企業による特許を通じたイノベーションの独占とその歪曲、データガバナンスをめぐるグローバルノースとグローバルサウス間の深刻な権力格差などが取り上げられ、迅速な対応を要する課題として強調されました。
こうした批判を受け、現状を打開するための具体的な方策も力強く提案されました。たとえば、技術開発の中心において異分野の視点から技術の本質を再解釈し、新たなビジョンを生み出すこと、地域の課題に即した小規模かつ実践的なAIの開発や、教育分野における創造的な生成AIの活用、社会のあらゆる層が垣根なく対話できる共通のAIナラティヴの形成などを通じて、公益とコモンズを促進するオルタナティブな未来の可能性が見いだされました。
最後には、B’AIグローバル・フォーラムの創立者である林香里教授(東京大学理事・副学長)は閉会の挨拶を述べ、多様な視点から支配的な言説を問い直すことでAIのエコシステムを方向付けるビジョンやアイデアを生み出す必要性を力説しました。