REPORTS

Steph Wright氏によるインタラクティブワークショップ
「倫理でポン!(Ethics Challenge!)」報告

Shuyi Li(東京大学総合文化研究科 修士課程)

・日時: 2024年11月19日(火)17:00-18:30(日本時間)
・形式:対面のみ
・会場:東京大学駒場Iキャンパス国際教育研究棟 (KIBER) 314
・使用言語:英語(通訳なし)
(イベントの詳細は こちら

Steph Wright氏によるインタラクティブ ワークショップ「倫理でポン!(Ethics Challenge!)」は、倫理の枠組み、人工知能(AI)、およびその交差点をテーマにした、非常にダイナミックな議論と学びの場となった。ワークショップは、「倫理とは何か」「AIとは何か」「パブクイズ(Pub Quiz)」、「まとめとQ&A」という4つのパートで構成された。各セクションは、参加者が批判的思考に基づくディスカッションと実践的な問題解決を模索する貴重な機会を提供した。

Wright氏は「倫理(ethics)とは何か? 徳(virtue)とは何か?」という根本的な問題を提示しながらワークショップを始めた。彼女は理論としての倫理学と応用倫理学の違いを論じ、後者が現代社会の人とテクノロジーをめぐるジレンマを考察するに重要であると強調した。有名な「トロッコ問題」(https://neal.fun/absurd-trolley-problems/を参照)をあげて、文化によって倫理観が異なることを示した。このような文化による倫理観の違いは、AI開発において人権などの普遍的な価値に準拠した信頼性と包摂性を備えたシステム構築を構築することの必要性を裏付けている。

次に、「AIとは何か?」という問いのもと、AIの定義とスコープ、そしてその広範な産業や日常生活への影響について述べた。特に強調したのは、AIが社会を革新する可能性をもつ一方で、無分別な開発がもたらすあらゆる問題、例えば偏見の強化、プライバシーの侵害、環境へ悪影響をもたらしうる点である。Wright氏はまた、AIが単なる技術的な道具ではなく創造・利用する人々の価値観や決定などに左右される極めて人間的な企図であることを理解する必要性にも言及した。そのうえでAIを倫理的にかつ公平に社会に還元するためには技術、法律、哲学といった関連分野を超えた協力が求められるべきであることを力説した。

その後は、活気あふれる「パブクイズ!」の時間が設けられ、参加者たちは楽しくもチャレンジングな競争に挑んだ。このクイズはAI倫理の異なる側面に焦点を当てる4つのラウンドで構成された。第1ラウンドでは、AIに関連する問題(バイアスや規制、社会的・環境的影響)をテーマにした6つの選択問題が出題された。第2・第3ラウンドでは、採用におけるAによるI差別やプライバシー、文化的な違いといったより複雑な問題に関する仮想ケーススタディが提示された。参加者たちは倫理的な課題を特定し、解決策を提案した。最終ラウンドは、プレッシャーの中で素早く考えるべく、○×形式のクイズが出題された。チームワークと批判的思考が鍛えられる楽しくて有意義な経験となった。

最後の「まとめとQ&Aセッション」では、参加者全員で重要なポイントを振り返ると同時にWright氏とさらなる議論を行った。なかでも、文化的な相違がAI倫理に対する意識形成に与える影響に関する質問は特に興味深いものであった。例えば、AIとロボティクスが幅広い分野に普及している日本では、倫理的AI利用に対して消費者と産業が強い認識を共有しているものの、中心となるテクノロジー企業が偏見を含むモデルを生み出すなどの矛盾が生じている。これはテクノロジー、資本主義、そして倫理の間の関係についてより深く考える必要性とともに、文化を超えて責任あるAIを作り出すには複雑な考慮が求められることを示している。

総じて、このワークショップはAIにおける倫理的課題についての理解を深めるための深層的な議論とインタラクティブな活動を組み合わせた魅力的で示唆に富むものであった。多様なバックグラウンドをもつ参加者は応用倫理学やAIへの貴重な学びを得ただけでなく、それを自分の分野に取り入れたいという意欲を深めた。Wright氏の親しみやすいスタイルと専門知識は心地よく知的刺激に満ちた環境を作り出し、参加者の心を奮い立たせ、多くのインサイトを与えた。