REPORTS

第34回B’AI Book Club報告
Moritz Altenried (2022) The Digital Factory: The Human Labor of Automation

加藤穂香(B’AI Global Forum 特任研究員)

・日時:2024年12月17日(火)13:00-14:30
・場所:ハイブリッド(B'AI オフィス & Zoomミーティング)
・使用言語:英語
・評者:加藤穂香(B’AI Global Forum 特任研究員)
・書籍:Moritz Altenried (2022) The Digital Factory: The Human Labor of Automation . The University of Chicago Press.

2024年12月17日、B’AI Global Forumのプロジェクトメンバーとその関係者が参加する書評会「B’AI Book Club」の第34回がハイブリッド形式で開催された。今回の書評会では、B’AI特任研究員の加藤穂香が、Moritz Altenriedによる著書 “The Digital Factory: The Human Labor of Automation”(2022)を紹介した。本書は2024年に日本語訳『AI・機械の手足となる労働者:デジタル資本主義がもたらす社会の歪み』(小林啓倫訳、白揚社)も出版されている。

本書では、デジタル資本主義を支える労働のシステムについて、インタビューやエスノグラフィーといった質的調査をもとに議論している。物流やゲーム開発に関連する労働、商品紹介文作成などのクラウドワーク、さらにはソーシャルメディアのコンテンツモデレーションなど、さまざまな具体例を通じて、オン・オフラインで行われる人間の労働が、自動化の過程と密接に結びついていることが示されている。デジタル技術が単に人間の仕事を代替するのではなく、技術の発展とともに、労働を取り巻く環境やシステムそのものが再編されているというのが本書の主張である。

書評会での議論では、本書で取り上げられている労働の形態は、他の研究や報道でもすでに紹介されているものの、「デジタル・テイラー主義」という概念をもとに議論することで、労働の特徴や構造が明確になり、理解しやすくなると指摘された。また、第4章の終盤で紹介されている、クラウドワーカーたちが不安定な労働に対して集団的な抵抗を試みている点について、多くの参加者の関心が寄せられた。全体を通して、労働者の権利が置き去りにされがちな現代の経済システムにおける不平等や不正義にどう向き合うべきかという問題意識が共有され、活発な議論が交わされた。