2026.Jan.26
REPORTS2025年度第5回BAIRAL研究会
「ロボットに対する行為を私たちはどう評価するか:倫理的非対称性仮説の検証」報告
毛 雲帆(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
・日時:2026年1月8日(木)13:00-14:30
・場所:Zoomミーティング(事前申し込み不要)
・使用言語:英語
・ゲストスピーカー:王敏一 氏(カンタベリー大学 人間インターフェース技術研究所 博士課程)
・モデレーター:毛雲帆(B’AI Global Forum リサーチ・アシスタント)
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2026年1月8日、2025年度第5回BAIRAL研究会を開催した。今回は、カンタベリー大学人間インターフェース技術研究所の博士課程に在籍する王敏一さんをお招きし、「ロボットに対する行為を私たちはどう評価するか:倫理的非対称性仮説の検証」というテーマでご講演いただいた。
まず、ロボットに対する人間の振る舞いが持つ重要性について背景を紹介された。例えば、「街中でロボットが暴力を受けているのを見て悪だと感じるか」「雨の日にロボットに傘を差し出す行為を見て善だと感じるか」といった具体例を挙げ、ロボット自体が苦痛を感じないとしても、その行為を目撃する傍観者が道徳的な判断を下している現状を指摘した。王さんの研究は、私たちがロボットと接する際の「善」と「悪」の評価の対称性を、厳密な実験を通じて探求するものである。
続いて、詳細な先行研究のレビューに基づき、王さんは独自の刺激と予備テストを設計した。調査では、人工エージェントに対する道徳的行動が、四つの枢要徳(審慮、正義、節制、勇気)の帰属にどう影響するかを検証した。本実験では、Prolificを通じて募集された英語母語話者146名を対象に、40のテキストベースのシナリオを用いて、道徳的行動と知覚された美徳の相関を多項式曲線近似によりモデル化した。 その結果、道徳的に否定的な行動と肯定的な行動に対する反応の間に、検出可能な非対称性が存在しないことを示しており、従来の「倫理的非対称性仮説」とは異なる結果となった。
最後の質疑応答では、この実験結果が本調査のデータサンプルや手法に特有のものか、あるいはより本体論的な特性を指し示しているのかについて深い議論が行われた。さらに、非英語母語話者に対する調査や非西洋社会における調査結果の変化、人間と機械の境界線についても議論が及んだ。このように、本講演はAI時代の倫理を再考する貴重な機会となった。