EVENTS

久野愛准教授講演会
「歴史から読み解く味覚と視覚—消費主義社会の台頭と『エステティクス』の変遷」

4月からB’AI Global Forumのメンバーとなった久野愛准教授(東京大学卓越研究員)の大学院情報学環・学際情報学府へのご着任を記念し、先生のご研究について伺う講演会を下記のとおり開催いたします。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

 

【開催情報】

 

・日時:2021年5月28日(金)18:00-19:30

・形式:Zoomウェビナー(要事前申込)

・言語:日本語

・主催:東京大学 Beyond AI研究推進機構 B’AI Global Forum

 

 

【登壇者】

講師:久野愛准教授

東京大学大学院情報学環准教授、東京大学卓越研究員、B’AI Global Forum運営チーム・研究協力者。感覚史・技術史・経営史が専門で、特にアメリカ合衆国の20世紀史に焦点を当てた研究を行っている。デラウエア大学歴史学部でPhD取得後、ハーバードビジネススクールにてポストドクトラルフェロー(2016–2017年)、京都大学経済学研究科にて講師(2017年–2021年)を務めた。近著『Visualizing Taste: How Business Changed the Look of What You Eat』(ハーバード大学出版局、2019年)は、ハグリー・プライズおよび清水博賞を受賞。現在は、感覚やエステティクスと技術・AIに関する歴史研究に取り組んでいる。

 

・コメンテーター:山中俊治教授(東京大学大学院情報学環/生産技術研究所)

 

・モデレーター:林香里教授(東京大学理事・副学長/大学院情報学環/B’AI Global Forum ディレクター)

 

 

【プログラム】

 

17:45 Zoomウェビナー開場

18:00 開会挨拶(林香里教授)

18:10 久野愛准教授 講演

18:45 山中俊治教授 コメント

19:05 対談およびQ&A(モデレーター:林香里教授)

19:30 閉会

 

 

【講演概要】

 

「歴史から読み解く味覚と視覚—消費主義社会の台頭と『エステティクス』の変遷」

 

私たちがある食べ物を「美味しそう」「新鮮そう」と感じるにあたって、色や視覚は大きな役割を果たしている。近年、欧米を中心に研究が進められている感覚史研究は、味覚や視覚といった五感は個人の身体的現象にとどまらず、文化や歴史に規定されることを明らかにしてきた。また、環境史・技術史研究が論じるように、「自然」と「人工/技術」という概念は密接に関係しており、その境界は流動的である。こうした議論を踏まえ、本講演では、19世紀末から20世紀半ばにおける米国に焦点を当て、食品企業の生産・マーケティング戦略、政府の食品規制、「自然な」色の再現を可能とする技術的発展、消費者の文化的価値観の変化のなかで、食べ物の「自然な色」・人々が「自然(当たり前)」だと思う色が構築されてきた過程を明らかにする。食べ物の色は、新たなビジネス戦略や技術開発を生み出しただけではなく、人と食の関係、さらには自然観を大きく変えるものでもあった。

 

歴史的産物としての食べ物の色—味覚と視覚—は、より広く資本主義社会における「エステティクス」の変遷とその歴史の中に位置付けることができる。ここで取り上げるエステティクスとは、日本語で一般的に訳される「美学」の意ではなく、その語源である古代ギリシャ語「アイステーシス」が意味する感覚的・感性的認識を指す。つまり、18世紀以降の西洋哲学、特にカントの美的認識論や、芸術・視覚的要素のみではなく、人々の五感を通した周辺環境の認識に関わるものであり、本研究は感覚的認識の歴史性・文化性を問うものである。特に本講演では、私たちの感性や感覚を通したエステティクスが、技術的・経済的・社会的・政治的変化の中でいかに構築されてきたのかを分析することで、技術開発やその利用と影響が政治的・社会的なものであることにも注目する。感覚という人の根本的な身体体験・認知の多面的な分析を通して、技術と社会そして人の関係構築について考える。

 

 

【お問い合わせ】

 

東京大学B’AIグローバル・フォーラム事務局 bai.global.forum[at]gmail.com([at]を@に変えてください)