2024.Oct.30
EVENTS第3回MeDi-B’AIシンポジウム
「メディアの現場はどう変わるのか?——AIとフリーランス新法」
2017年5月に結成された「メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会(MeDi)」は、2020年には東京大学Beyond AI研究推進機構 B’AI Global Forumの下部組織となり、これまで7年間にわたって活動してきました。
この度、「メディアの現場はどう変わるのか?——AIとフリーランス新法」と題してシンポジウムを開催することになりました。ご関心のある方はぜひご参加ください。
◇ 開催情報
・主催:メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会(MeDi)
・共催:東京大学 Beyond AI研究推進機構 B’AIグローバル・フォーラム
・日時:2024年11月16日(土)13:00〜16:10(開場12:30)
・形式:対面のみ
・会場:東京大学本郷キャンパス 情報学環・ダイワユビキタス学術研究館3階 大和ハウス石橋信夫記念ホール
・言語:日本語
・参加方法:参加には事前申し込みが必要です。下記URLよりお申し込みください。
______ https://forms.gle/tAPa799svjcx2QkA7 (先着順・定員100名)
・お問い合わせ:medigender[a]gmail.com([a]を@に変更してください)
※定員を超えた場合はその時点で申し込み受付を締め切らせていただきます。ご了承ください。
※都合により、登壇者が変更になる場合がございます。
◇ プログラム
総合司会:大下香奈(フリーアナウンサー/ボイス・スピーチトレーナー)
13:00〜13:10 <趣旨説明> 林香里(東京大学理事・副学長/大学院情報学環教授/MeDiメンバー)
13:10〜14:00 <第一部: 変わりゆくメディア業界に関する問題提起>
◉ 浅田智穂(インティマシーコーディネーター)
◉ 池田鮎美(性暴力被害者/元ライター/ポリタスTV MC)
◉ 佐藤大和(レイ法律事務所/弁護士(東京弁護士会))
◉ 長谷川朋子(ジャーナリスト/コラムニスト/(株)放送ジャーナル取締役)
◉ 李美淑(大妻女子大学文学部 准教授/MeDiメンバー)
◉ 白河桃子(相模女子大学大学院特任教授/MeDiメンバー)★モデレーター
14:10〜15:00 <第二部:解決に向けた知識の共有>
◉ 北出真紀恵(東海学園大学人文学部長・教授)
◉ 橋本陽子(学習院大学法学部教授)
◉ 山﨑俊彦(東京大学大学院情報理工学系研究科教授)
15:10〜16:10 <第三部:パネル討論>
◉ 池田鮎美(性暴力被害者/元ライター/ポリタスTV MC)
◉ 北出真紀恵(東海学園大学人文学部長・教授)
◉ 森崎めぐみ(俳優/一般社団法人 日本芸能従事者協会 理事)
◉ 浜田敬子(ジャーナリスト/一般社団法人デジタル・ジャーナリスト育成機構代表理事/MeDiメンバー)
◉ 田中東子(東京大学大学院情報学環教授/MeDiメンバー)★モデレーター
登壇者に関する詳細はMeDiホームページをご確認ください。https://www.medi-gender.com/symposium-20241116/
◇ シンポジウム開催に際してのMeDiのステイトメント
大手出版社やテレビ局など、大学生にも人気の華やかなメディア制作の現場やクリエイティブ産業では、長年にわたって過重労働やハラスメント、不透明な商慣行、さらには階級社会のような大幅な身分格差や賃金格差などが不可視化された問題として存在してきました。これらの目に見えない不平等・不正義は、近年、関係者が声を上げて訴え出ることや、法律の改正、新しいテクノロジーの介在によって、少しずつ私たちの目の前に重大な問題として立ち現れるようになっています。
例えば、まんが「セクシー田中さん」のテレビドラマ脚本が原作とはかけ離れて改変されていた問題[i][ii]や、BPO(放送倫理・番組向上機構)案件にもなった女性アナウンサーへの長年にわたるハラスメント(放送人権委員会決定 第79号)[iii][iv]など、とくに女性をはじめとするマイノリティや立場の弱いフリーランスの人々への被害が顕著であることが分かってきました。これらの事件を詳しく見ると、企業側において「多様性尊重はメディア文化の要である」という意識が非常に弱く、特にフリーランスとして働く人たちの権利と立場がきちんと保証されていないことが見えてきます。問題なのは、メディアの制作現場に、マスコミ黄金時代の同質性の高い内向きな職業文化がいまもなお健在していることではないでしょうか。
さらに、ChatGPTなどの生成AIの出現はメディアの世界を激変させ始めています。実際、コンテンツ制作における自動化、効率化、最適化を通じて、生産性を上げるという新自由主義的な価値観のもとで、生成AIは様々なメディア業界に活用されるようになってきました。これまで人間が行っていた仕事をAIが代替し始めるなど、人間の労働に対する影響が懸念されています。AIによる失業への懸念は、俳優やアナウンサーなどの出演者、ライター、イラストレーター、デザイナー、通訳、翻訳など、クリエイティブ産業のなかでも、とりわけフリーランスの立場で働く人々の領域で大きく広がりつつあります。単に仕事を奪われるだけでなく、AIモデルやAIアナなど、AIによる人間の代理表象も増えるなか、ステレオタイプな性別イメージの再生産の問題など、懸念されるところも多くなってきました。
文章を書くことが好き、演技が好き、声で人に語りかけることが好きなど、個人の才能や創意工夫がもっとも尊重されるべき職種において、人権が守られず、「やりがい搾取」の現実が立ちはだかり、さらには生成AIによる仕事の収奪の危機にもさらされつつあるメディア制作の現場で、いま何が起きているのでしょうか?そしてそこにはどのような問題が潜んでいるのでしょうか?MeDiでは、これらの問題の根幹に、基本的人権の侵害、ジェンダー不正義、権力の勾配といったさまざまな問題が潜んでいると考えています。こうした問題は、実は日本のメディア文化の発展に、ブレーキをかけているのではないでしょうか?
本シンポジウムでは、今年11月に施行される「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」通称「フリーランス新法[v]」と、私たちの労働の現場を席捲しつつある生成AIの問題に着目し、日本のメディア産業従事者の人権とメディア文化のあり方を皆さんと一緒に再考していきたいと考えています。フリーランス新法は、現状のメディア労働現場をどこまで改善していくことができるのでしょうか?マイノリティや弱い立場にある方々の人権を守り、日本のメディア文化の改革を進めることができるのでしょうか?AI技術の発展を、人間の労働をめぐる既存の権力構造や価値観の強化に寄与するものではなく、人権を基盤により多様で、平等で、インクルーシブな社会を作っていくために活用していくには何が必要とされるのでしょうか?労働環境の改善、制度改革、文化保護、テクノロジーなどさまざまな話題を横断しつつ、多様性の尊重という価値を中心に据えながら、わたしたちと一緒に考えていきませんか?
[i] 小学館「特別調査委員会による調査報告書公表および映像化指針策定のお知らせ」<https://www.shogakukan.co.jp/news/476401>
[ii] 日本テレビ「ドラマ「セクシー田中さん」 社内特別調査チームの調査結果について」<https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/20240531.html>
[iii] 放送倫理・番組向上機構「「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」に関する委員会決定」2023年第79号 <https://www.bpo.gr.jp/?p=11697>
[iv] MeDi メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会「「BPO放送と人権等権利に関する委員会決定第79号『ローカル深夜番組女性出演者からの申し立て』に関する委員会決定」に関するMeDiの意見」<https://www.medi-gender.com/bpo-humanrights/>
[v] 公正取引委員会フリーランス法特設サイト <https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/>