REPORTS

2022年度第10回BAIRAL研究会
「SFプロトタイピングの話かそうではない話」報告

大井将生(B’AIリサーチ・アシスタント)

・日時:2023年3月3日(金)18:30-20:00
・場所:Zoomミーティング
・言語:日本語
・ゲストスピーカー:樋口恭介(SF作家)
・モデレーター:大井将生(B’AIリサーチ・アシスタント)
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2023年3月3日(金)、B’AIグローバル・フォーラムのリサーチ・アシスタントが主催する研究会BAIRAL」の2022年度第10回がオンラインで開催された。今回は、SF作家の樋口恭介先生をお招きし、「SFプロトタイピングの話かそうではない話」というテーマでご講演いただいた。

講演ではまず、SFプロトタイピングの概要や特徴、手法や事例が紹介された。その中でも最新事例として、東京大学「講談社・メディアドゥ 新しい本」寄付講座におけるSFプロトタイピングワークショップのケースを活用軸として、SFという世界のとらえかたが、これからの社会を構想するにあたっていかに重要な位置を占めていくかということについて語られた。後半には参加者との活発な質疑応答も交わされ、それぞれの関心に則したSFプロトタイピングと社会の関わりについて議論が行われた。

樋口氏から提示されたSFプロトタイピングは、本当にほしい未来を想像=創造するための思考法であり、現実の様々な制約事項から解放された「ここではないどこか」としての未来を模索するツールである。他者との議論を通して新たなストーリーを構築し、その過程で新たなアイディアを共有しあうプロセスを経て協創されるSF小説は、一つの大きなヴィジョンとなり、そこからバックキャスティングして直近のアクションを促すことに繋がる。今回の議論ではそのようなSFプロトタイピングの視点で現代社会を捉え直すことについて、新しい気づきが得られる契機となった。

今後は一層、様々な分野・所属・立場のアクターが学際的な研究・活動のために協働できる機会の創出が望まれる。BAIRALがそうした契機に繋がる一つのメディア/コミュニティとして社会に貢献できるよう、引き続き研究と修養に努めたい。