2022.Feb.16
REPORTS2021年度第6回BAIRAL研究会「インターネットと科学研究」報告
加藤大樹(B’AIリサーチ・アシスタント)
・日時・場所:2021年12月9日(木)18時~19時半 @Zoomミーティング
・言語:日本語
・モデレーター:加藤大樹
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2021年12月9日(木)、B’AIグローバル・フォーラムのリサーチ・アシスタントが主催する研究会「BAIRAL」の2021年度第6回がオンラインで開催された。今回は、金沢大学の一方井祐子准教授をゲストスピーカーにお招きし、シチズンサイエンス(市民科学)やクラウドファンディングなどの専門家と非専門家による共同的な研究プロジェクトについてお話を伺った。一方井先生が国内外の事例を引きながらシチズンサイエンスやクラウドファンディングについて話題提供をした後、発表者と出席者が関連する論点について質疑応答やディスカッションをおこなった。
一方井先生によると、シチズンサイエンスとは市民やステークホルダーが研究活動の各プロセスに参加する研究の一種であり、一方井先生は特に、非専門家が資金獲得やデータ収集、データの処理や分析プロセスに参加する事例を研究対象としてきた。このような共同的な研究は長い歴史を持つが、インターネットの登場や研究課題の大規模化・複雑化に伴い、近年になってますます活発になっている。特にヨーロッパやアメリカではシチズンサイエンスのためのオンライン・プラットフォームの整備も進んでおり、いくつかのプロジェクトの研究成果は科学コミュニティの中でも高い評価を受けている。
日本でもこのような市民参加型の研究プロジェクトが大きな注目を集めつつある一方で、討論に参加した参加者からはシチズンサイエンスに対する懐疑的な声も上がった。例えばある参加者は、シチズンサイエンスでは大衆受けする研究プロジェクトが成功しやすいため、結果として研究テーマの多様性が失われる危険性があるのではないかと指摘する。また、まだシチズンサイエンスやクラウドファンディングに関する評価制度が整備されていないため、研究プロジェクトの活動やその成果物に関する倫理的、もしくは客観的な評価基準があいまいであるという問題点もある。
上述のように、市民参加型の研究プロジェクトに関しては解決すべき課題も数多く残されており、今後の調査・研究のさらなる蓄積が期待される。シチズンサイエンスやクラウドファンディングによって研究者コミュニティが活性化し、科学研究が進展するケースも多々あるため、今後もより良い環境の整備に向けて継続的に議論していく必要があるだろう。