REPORTS

第27回 B’AI Book Club 報告(※研究発表)
「Exploratory analysis of perceptions of artificial intelligence among high school students living in Japan」

William Guzman(B'AI Global Forum 院生メンバー)

・日時:2024年2月27日(火)13:00-14:30
・場所:B’AIオフィス&Zoomミーティング
・使用言語:英語
・報告:「Exploratory analysis of perceptions of artificial intelligence among high school students living in Japan」
・報告者:William Guzman (東京大学大学院学際情報学府 修士課程)
     Alyssa Castillo Yap(東京大学大学院学際情報学府 修士課程)

2024年2月27日、B’AIグローバル・フォーラムの書評会「B’AI Book Club」の第27回がハイブリッド形式で開催された。今回は、B’AI院生メンバーのWilliam GuzmanとAlyssa Castillo Yapが、日本の高校生のAIに関する認識をテーマに現在取り組んでいる研究について発表を行った。

まず、このトピックについての簡単な文献レビューと、データ収集の状況および進行中の分析に関する報告が行われた。現在、学生のAIとの関係を分析している多くの研究は、最近標準化された教育の枠組みに従って、学生のAIに関する「誤解」を「修正」しようとする傾向がある(Mertala et al 2022; Mertala and Fagerlund 2024)。しかし、そもそもどのようにして学生が最初にAIに関する認識を形成し、どのようなAIの形態や事例が彼らの意見の形成に影響を与えたかについてはあまり研究されていない。さらに、異なる国や文化的文脈におけるAIに対する意見の多様性を示す重要な研究があるにもかかわらず、多くの研究が依然としてアメリカとヨーロッパの文脈に焦点を当てている。このような問題意識から、本研究では、日本に住む高校生がどのような形でAIに接触しているか、そして彼らのAIに関する一般的な認識はどのようなものなのかに焦点を当てて調査を行った。

研究方法としては、日本に住む高校生86人を対象とした2言語でのオンライン調査などが採用された。自由記述形式の質問とリッカート尺度の質問を組み合わせて、(a)学生のAIに関する一般的な認識、(b)さまざまなAI技術への主な接触形態について聞き取り、それが彼らの意見形成にどのように影響を与えるかについて分析を試みた。自由記述形式の質問と回答の複雑さから、発表者はデータを特徴づけるための最良の方法についてフィードバックを求め、自由記述形式の質問の質的要素を探索するために適用可能な演繹的、帰納的、およびアブダクティブなコーディングスキーマに関する有益な提案が多く寄せられた。特に、読書会のメンバーは、特定の参加者からの回答の潜在的範囲について関心を示した。1人の回答者に見られる可変性や、AIに関する認識が状況や話題に応じてどのように変わってくるかについて関心が示された。また、日本の中等教育の構造に関するさらなる洞察も提供された。特に、生徒が特定の質問形式に対してどのように対応するように教えられているかに焦点が当てられた。この事前のトレーニングと生徒が質問に答える際の異なるアプローチは、分析における交絡変数となる可能性があるものの、回答から明確な洞察を得るのにも役立つと考えられる。

さらに、量的データについても議論された。それらはいくつかの点で、標準統計手法を用いたより簡素な分析に対応する可能性があり、これはさらなる研究のための有益な手段であると同時に、質的分析を深める有用な手段としても議論された。読書会の参加者は特に、リッカート尺度の回答が質的分析とどのように統合され、AIに対する視点の多様性と複雑さをどのように明らかにできるかについて議論した。これらの議論から、発表者は次の研究とデータ分析プロセスの次のステップに関する多くの有益な提案と洞察を得ることができた。

本研究の暫定的な結果は、主に2つの相関関係を示している。一つは、学生の性別と特定の技術にさらされる可能性との間の相関関係であり、もう一つは、ChatGPTの例に見るような技術への特定の形態の露出がAIを、危険である、遍在している、有用である、利用可能であるといった認識へと導くことに関する相関関係である。読書会の参加者は、これらの洞察を非常に有益だとし、本研究と今後の可能な研究が、AIの倫理や教育、擁護に関する議論にどのように貢献できるかについてさらに議論した。

この研究は、2023年9月に開催された展示会「Perceptions: Reconstructing AI Narratives」に続くB’AIグローバル・フォーラム院生メンバーによるAI探求の一環である。院生メンバーは現在、異なる社会文化的文脈で人々が保持するAIに関するさまざまなありうる「認識」について理解すべく研究に取り組んでいる。AIとの相互作用は、認知的な解釈や定義の問題だけでなく、ユーザーと設計者の現実の時間と空間の中に位置付けられるべきである。AIに関しては、異なる社会文化的文脈での幅広い使用例と応用例を考慮したより柔軟な解釈が必要である。学術研究のアプローチは、AIの日常的な使用に伴う人間と非人間の相互作用について幅広い理解を許容すべきであり、非西洋の環境におけるAIの過度に終末論的あるいは規範的な定義を解体すべく努めるべきである。

読書会で寄せられたすべてのコメントに感謝申し上げる。発表者は今後も春学期にわたって調査を続ける予定である。