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2020年度第1回BAIRAL研究会「検索エンジン・ランキングのメディア論」報告

加藤大樹(B’AIリサーチ・アシスタント)

日時・場所:2020年12月18日(金)午後6時~午後7時半 @Zoom

2020年12月18日(金)、東京大学大学院学際情報学府の博士課程に在籍している宇田川敦史さんを講師としてお招きし、B’AIのリサーチ・アシスタントが主催する「BAIRAL」の第一回研究会が開催された。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するために、研究会はオンラインでおこなわれた。研究会の前半には宇田川さんから研究紹介と話題提供があり、後半は参加者との質疑応答やディスカッションをおこなった。

宇田川さんは博士課程に在籍中の社会人学生であり、デジタルマーケティングの仕事に携わりつつ、Google等の検索エンジンの問題について批判的かつ実践的な研究をおこなっている。修士論文では検索エンジンに関する言説の変遷を辿ることで、検索エンジンのアルゴリズムや順位付けの根拠を意識せず、検索結果を無批判に信頼してしまう現在の社会の成り立ちを明らかにしている。人力による意味論的な分類から機械による計算論的な分類への移行や、ランキング・システムの技術的側面が注目を集めていた局面から技術的な解説抜きでGoogleそのものへの信頼が語られる局面への変化など、興味深い論点がいくつも提出された。

こうした研究紹介・話題提供を受け、その後は講師と参加者との間で質疑応答やディスカッションがおこなわれた。そこではGoogleの現在の取り組みや今後の方向性といった話題だけでなく、オルタナティブな検索エンジンの可能性や社会の側からの働きかけ(社会運動)についても多くの質問や意見が交わされた。特に、検索エンジンやSNSの資本主義的なプラットフォームのあり方を問い直し、協同組合的なプラットフォームの運営を試みるプラットフォーム・コーポラティズムについての議論は興味深かった。ただ、こうした「今とは異なる情報環境のあり方」を模索するような社会的な動きが見られる一方で、今のところそれが多くの人に受け入れられていないという現状も冷静に分析する必要があるだろう。このように、検索エンジンの技術的な側面だけでなく、それを取り巻く社会的な交渉プロセスにも目を向けることで、現在の情報環境の問題と可能性を批判的に検討することができる。技術決定論的な楽観論や悲観論に陥ることなく、社会と技術のよりよい関係の築き方を地道に模索し続けていくことが大切だろう。その意味で、検索エンジンの技術的な特徴や制約とそれを乗り越えようとする社会的な取り組みの双方に議論が展開した今回の研究会は、大変実りの多いものだったように思う。