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オンラインワークショップ「デザイン思考で考えるAIとジェンダー」報告

田中 瑛(東京大学大学院学際情報学府博士課程、B’AIリサーチ・アシスタント)

日時:2021年3月3日(水)13:00-17:00、3月5日(金)13:00-17:00
場所:Zoomミーティング
主催:B’AIグローバル・フォーラム(東京大学Beyond AI研究推進機構)、東京大学生産技術研究所DLX Design Lab、東京大学国際総合力認定制度Go Global Gateway

2021年3月3日 (水)と3月5日 (金)、オンラインワークショップ「デザイン思考で考えるAIとジェンダー」が開催された。このワークショップでは、東京大学国際総合力認定制度Go Global Gatewayに登録している学生26名が、AIとジェンダーに関するプロダクトデザインを行った。左右田智美氏(DLX Design Lab、B’AIグローバル・フォーラム)がワークショップ全体をデザインし、学生は4つのチームに分かれて議論を重ねた。各チームには、デザインコンサルティング会社での経験を持つDesign Labの研究員4名と、B’AIの特任研究員・RA有志4名がファシリテーターとして参加した。英語でディスカッションを進めながら、オンラインホワイトボード「miro」を用いてアイデアを具現化し、最終的には具体的な解決策のイメージを発表した。

 

各日の前半では、ワークショップを行う前にインプットの機会が設けられた。林香里教授(大学院情報学環、B’AIグローバル・フォーラム)がAIとジェンダーという接点の曖昧な問題の関連性、菅野裕介准教授(生産技術研究所)がAIがどのようにより包括的になれるのかについて説明した。左右田氏からは「デザイン思考」についての取り組みの紹介も行われた。

 

ワークショップでは、「AI」と「ジェンダー」から想起される言葉やイメージを、各々の参加者が付箋に貼り付け、その組み合わせからアイデアを連想し、膨らませた。例えば、報告者のチームでは、GoogleアシスタントやSiriのような音声アシスタントのデフォルト設定が女性の音声であるという現状を踏まえ、より多様なジェンダー・スペクトラムを持つAIロボットを自分自身でデザインできるようにする機能を提案した。その他のチームからは、少数者のニーズに応じたGoogleマップの表示機能、性的虐待の経験を共有し相談するためのプラットフォームでのAIの活用、政策形成に多様な視点を取り入れるためのAIの活用が提案された。

 

多様な背景や専門分野を持つ学生が集まり、実際に手を動かしながら話を進めたことで、相互の認識の違いを浮き彫りにしたり、個人が一人で考えるうちはできないような提案をすることができた。「AI」は「AI」、「ジェンダー」は「ジェンダー」と区分けされやすい状況を乗り越えることは、東京大学の中ではまだまだ新鮮な経験であり、今回1回に限らず、繰り返し実践していくことが望ましいのではないかと報告者は感じた。