REPORTS

2023年度第2回BAIRAL研究会
「情報バイアスを擦り抜ける情報デザイン――大衆情報とマイノリティオピニオンの可視化」報告

大井将生(B’AIリサーチ・アシスタント)

・日時:2023年6月22日(木)15時00分~16時30分
・場所:Zoomミーティング
・言語:日本語
・ゲストスピーカー:原田真喜子(独立行政法人日本学術振興会 RPD/東京大学大学院情報学環特任研究員)
・モデレーター:大井将生(B’AIリサーチ・アシスタント)
(イベントの詳細はこちら

2023年6月22日(木)、B’AIグローバル・フォーラムのリサーチ・アシスタントが主催する研究会「BAIRAL」の2023年度 第2回がオンラインで開催された。今回は、独立行政法人日本学術振興会 RPD/東京大学大学院情報学環特任研究員の原田真喜子氏をお招きし、「情報バイアスを擦り抜ける情報デザイン――大衆情報とマイノリティオピニオンの可視化」というテーマでご講演いただいた。

講演ではまず、インターネット上の情報を検索・認識する際、さまざまなバイアスがかかっている可能性があることが指摘された。また、バイアスがかかった状態で情報を得ると、自分自身に都合の良い解釈ばかりしてしまうことや、誤った情報・質の低い情報の取得を助長するにも繋がる危険性への警笛が鳴らされた。上記の問題意識を踏まえ、発表者はマスメディアでは報道されにくい大衆の小さな意見が投稿されるTwitterのデータに着目し、現代の情報検索や情報認識の課題に対して検索結果のテキスト解析と既存のユーザーインタフェースとは異なるデータの見せ方をすることでバイアスを軽減し、意識の外側への気づきを促すことを目指していることが述べられた。

続いて、上記の目標を達成するために発表者がこれまでの研究で制作してきた作品が紹介された。例えば、検索結果から感情を抽出・感情色彩に基づく可視化や、英語-日本語-スペイン語による横断検索とキーワード抽出結果の可視化、一般的な検索を支援するサーチエンジン検索予測候補の推移の可視化などのアプリケーションのデモンストレーションと解説が行われ、参加者からも多様な観点からの質問が寄せられた。いずれの事例においても、検索結果から「なるほど」ではなく「なぜ」という発想に至るような表現の工夫をしている点に特徴があり、情報に関する「問い」を創発するそれらのシステムは、学校などでの情報リテラシー教育への応用、社会貢献も視野に入れられたものであった。

原田氏から提示された「情報バイアスを擦り抜ける情報デザイン――大衆情報とマイノリティオピニオンの可視化」は、情報化がドラスティックに進展する現代を生きる私たちが、新たな視点で世界を見つめ直すトリガーとなり得る。今回の議論を契機として、社会の諸課題への多角的な理解を深め、テクノロジーと情報デザインを媒介としたより良い解決策を見つけられるよう、引き続き研究と修養に努めたい。