REPORTS

第7回B’AI Book Club報告
Jennifer Robertson, Robo Sapiens Japanicus: Robots, Gender, Family, and the Japanese Nation (2017)

田中 瑛(2021年度 B’AIリサーチ・アシスタント)

・日時・場所: 2021年12月21日(火)17:30-19:00 @Zoomミーティング
・使用言語:日本語
・書籍: Jennifer Robertson (2017). Robo Sapiens Japanicus: Robots, Gender, Family, and the Japanese Nation. Berkeley, CA: University of California Press.
・評者:板津木綿子(東京大学大学院情報学環教授)

2021年12月21日に、B’AIグローバル・フォーラムのプロジェクトメンバーによる書評会「B’AI Book Club」の第7回を開催した。今回の評者は板津木綿子教授が担当した。『Robo Sapiens Japanicus: Robots, Gender, Family, and the Japanese Nation』の著者Jennifer Robertsonは美術史、アジア研究、人類学などを渡り歩いてきた日本研究者であり、アーティストとしての顔も持つ。同書はテクノロジーの開発が新たな価値創造をもたらすだけでなく、伝統的な価値の再生産、堅持を可能にする装置になり得ることを、第一次安倍内閣から第三次安倍内閣の間のロボット開発を取り上げ、日本の家族観、ジェンダー観、身体観などのノスタルジックな社会通念を再強化していることから実証的に明らかにしたものである。例えば、ロボットとの共存を求めたり、ロボットを人間と同様に扱う視点が、神道や仏教に由来していることなど、「日本」という固有のコンテクストを取り上げている。

後半に特に議論になった点としては、身体的な要素として文化的生殖器を付与するなど、通念的な「ジェンダー感(観)」(板津教授の訳)の具現化に関心が向けられ、それが肉体的身体と超越的・抽象的身体を兼ね揃えた存在である「ミス日本」と似ているという著者の指摘である。また、ロボットの人権が外国籍移住者の人権よりも重んじられるなどの、アンバランスな状況も、高齢者が外国籍移住者よりもロボットに介護されたいという回答が多かったというアンケートなどからも指摘された。

議論では、ケアにおけるロボットの主体性についてどのような理解ができるのか、日本固有のコンテクストとされているものが本当にそうだと言えるのか、ロボットの人間的な表象がどのようにあるべきなのかといった問題が取り上げられた。全体的に、ロボットを人間に近付けるという関心を無批判に称揚するのではなく、その背景にどのような文化的・社会的要因が働いているのかを考えていく必要性があることを感じさせられた。